つづしる
国語辞典を引いていて、たまたま「嘰る(つづしる)」なる言葉を知った。大辞泉によれば、
少しずつ物事をする。食べたり、歌ったり、歩いたりなど種々の場合に用いられる。「塩辛き物どもを―・るに」(今昔・二八・五)
とある。漢字源を引くと「嘰」の字義は「少しずつ食べる」だそうだ。
Webでもちょっと調べたが、用例として見つけたのは万葉集、今昔物語集、源氏物語くらいで、まあ古語ということになるだろう。しかも古語の中でもかなり古いものである。
便利な動詞だなと思う。今同じ意味合いを言うにはなんと言うだろうか。「少しずつ」を避けるならば、「ちょっとずつ食べる」「ぽつりぽつり歌う」「休み休み歩く」のようになってしまうか。なんとなく垢抜けない表現にならざるを得ない感じがある。
いろいろな動きをこの一語で表せるのも面白いところだ。万能動詞の「する」に、万能さをそのままに「少しずつ」の意味を加えたようなものであって、食べ物を嘰るなら「食べる」だし、歌を嘰るなら「歌う」になる。
とはいえ用例がそんなにないからそれ以上拡張して解釈してよいのかどうか辞書によって判断が分かれているように見えるが、もし今に生き残っていたらあらゆることに使われたのではないだろうか。ブログを嘰ったと書けば、考え考えちょっとずつ記事を書いたんだなとわかる。かっぱえびせんを嘰ったと書けば、多分ぽりぽり食べ続けてそのまま一袋空けてしまったのだろうと思う。
今唐突に使い始めても誰にも伝わらないから、言葉として十分に機能するものにはならない。しかしこういうものを個人の趣味としてわざと使ってみるのも面白いことではないかと思う。例えばブログ内で使って、その度にこのページへのリンクを張っておく。そうすると、衒いではなく面白がってやっていることだと伝えられる。辞書へのリンクを張ったんじゃ駄目だ。その語の意味はわかるが、何の意義があってそんな非日常の語彙を持ち出してきたのかわからない。
とりあえず、面白い言葉を見つけたらこうやって書き溜めていくと後で使えるかもしれないし、茶の間が豊かになるから、それはどの観点でも良いことである。